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「やあ、楽しそうだね、何の話?」

目に痛いほどの鮮やかなピンク色のつなぎを着込んだ二人組。
その二人が食事をしているテーブルへと真っ直ぐに歩を進めると、蓮は爽やかな笑顔で彼女達に話しかけた。

「あ、敦賀さん、こんにちは!この間敦賀さんから聞いた『新しい翼』について話していたんですよ」
「ああ、先日の収録の時の話だね。俺と社さんもこれから昼食なんだけど、同席させてもらっていいかな?」
「勿論です、どうぞ!」
食事が置かれたトレイを手に傍らに立っている二人に、キョーコは愛想良く席を勧めた。

「琴南さんも構わないかな?」
「……どうぞ。でも敦賀さんが一緒のテーブルに座るだなんて緊張しますね」
「なぜだい?」
緊張どころか興味もないといった素っ気無い調子の答えに、蓮が疑問を投げかけた。

「さすが敦賀さんは芸能界きっての人気俳優ですよね。所属している社内の食堂においてさえ、女性の熱い視線を一身に浴びているんですから。一緒にいる私達まで注目をされているようで、なんだか気恥ずかしい気がします」
「ああ、なんだそんな事か」
必ずしも歓迎を意味していない奏江の言葉を、蓮はにっこりと一蹴した。

「琴南さん、それは杞憂というものだよ。俺達がここに来た時には君達は十分過ぎるほどに注目されていたんだから、今更気にしたところで手遅れではないかな」
綺麗な笑顔でサラリと告げられた事実に、奏江の肩が小刻みに震えだした。

「……キョーコ……?」
「な、なあに?モー子さん……」
ゴゴゴゴゴ……と奏江の背後から立ち上る黒い気配に、キョーコが及び腰で返事をする。

「前言撤回するわ。さっきは『迷わずに突き進めばいい』と言ったけど、やっぱりアンタはセーブすると言うことを覚えなさい。じゃないと親友やめるわよ!!」
「い……いぃやあぁぁぁぁっっっ!モー子さんっ、やめるなんて言わないでーーっっ!!」
「なんでそう学習能力がないのよ、アンタはっ!」

この世の終わりとばかりに絶叫するキョーコと、それに負けない勢いで彼女を叱り付ける奏江。
二人の様子を見ていた蓮がクスクスと笑い出した。

「本当に君達は仲がいいね」
「敦賀さん!」
キョーコが涙目でじろりと蓮を睨みつける。

「人事だからって暢気に笑っていないでくださいっ。だいたい今の話をちゃんと聞いてたんですか?私、モー子さんに親友をやめられるかもしれないんですよ!どん底目の前の崖っぷち、絶体絶命の大ピンチなんですっ!!」
「そう?俺にはむしろ逆に思えるけど……ね?琴南さん」

蓮は力説するキョーコから、彼の斜め前に座っている奏江へと視線を移し問いかけた。

「逆なのかどうかはこの子次第ですから」
「モー子さぁぁぁん」
ふるふると小動物のように身体を震わせ、キョーコが涙声で親友の名を呼ぶ。

「琴南さんもなかなかに容赦がないね」
「そうだな。似たような行動を取る人間を、俺はもう一人知っているけど……なあ、蓮」
今まで特に会話に入る気配を見せなかった社が、ここぞとばかりに口を挟む。

「何が言いたいんですか、社さん」
「べーつーにー?キョーコちゃんも大変だなあと思ってさ」
「そんなっ!モー子さんに嫌われたりしたら大変なんてものじゃないです!私、悲しくてずっと泣き明かします!希望を失くしてお先真っ暗ですーーっっ」
社の言葉を違う意味合いで受け止めたキョーコが断言して、ダーーッと滝のような涙が彼女の目から溢れ出す。

「ふぅん、本当に琴南さんの事が大好きなんだね……?」
蓮の纏う空気の温度がガクンと急降下し、それを察知したキョーコの身体がビクリと震えた。

「つ……敦賀さん?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、最上さん」
横に座っているキョーコへと身体を向け、眼を細めて蓮が笑う。

「もし君の涙が止まらなくなったなら、その時は俺がどんな手を使ってでも止めてあげるから。どういうやり方がお好みかな?君の望む通りにやってあげるよ。例えば……」
「けっ…け、け結構ですっ!敦賀さんのお手を煩わせるほどの事ではありませんからっ!!」

蛇に睨まれた蛙の如く、凍りついたキョーコ。
優しげな言葉とは裏腹の怪しげな蓮の表情に、彼女の瞳に浮かんでいた涙は恐怖で既に引っ込んでいた。

「絶体絶命なんだろう?そう遠慮せずに俺に任せてくれれば」
「遠慮なんてしてませんっ!!!」

あーあ、そんな風に容赦なく追い詰めるところが似ているんだよ…と苦笑する社に、私はあんなに性質が悪くありません!と奏江が反論する。

「どちらにしても大変だよな、キョーコちゃん」
「一緒にされるのは不本意ですけど……確かにあの子は気を許した人間には弱いところがありますから、敦賀さんには負けっぱなしになるでしょうね」
「それはどうかなぁ……」
「……何がですか?」
「本当の意味で勝っているのはキョーコちゃんかもしれないよ?」

社は意味ありげに口角を上げた。


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