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HAZARD 1

「8分前か……」

まあ頃合いかな、と携帯電話で時間を確認した蓮は、社長室の前で立ち止まった。
入室の可否を問うために扉を叩こうとしたところ、蓮の手が触れる前にそれは思いがけず、カチャリと内側へ開いた。

(え…?)

まるで電池の切れた玩具のように、上げた右手を下ろすことも忘れてそのまま固まったのは、部屋から現れたのが鮮やかなショッキングピンクを纏った少女だったからだ。

(最上さん?)

条件反射のように浮かんだ名前は、すぐに違うと脳内修正される。自分を見上げる黒髪の少女に、蓮は見覚えがなかった。

(誰だ?琴南さんでもないという事は…まさか)

「おう、蓮。何をぼけっと突っ立ってるんだ。そこをどかんと天宮君が帰るに帰れないだろうが」
「あ…はい」

社長に促されて初めて自分が呆けて立ち竦んでいたことに気づき、蓮は数歩横へと移動して道を開けた。

「すみません」
軽く斜めに頭を下げて千織は廊下へ出ると、クルリと後ろを向いて社長へと向き直った。

「この度は無理なお願いを聞き入れてくださって、ありがとうございました」
「なに、気にする必要はない。俺は意欲のある者は拒まん主義でな。その代わりきちんと仕事はこなしてもらうぞ」
「はい、それは勿論です。お仕事がある時には遠慮なく呼び出してください。それでは失礼致します」

一礼をして去っていく後姿を見送ると、蓮は豪奢な民族衣装で身を包んだ部屋の主に疑問を投げかけた。

「社長、あのツナギを着ているという事は、もしかして…」
「一体どういうことですか!?」

蓮の声に被さるようにして、驚きと憤りを含んだ叫びが狭い廊下に響き渡った。
話の腰を折られた形となった蓮が、何事かと声のした方向へと視線を向けると、そこには先ほどの少女とすれ違う形で歩いて来た青年が、愕然とした表情で社長を凝視していた。

「社長!今エレベーターに乗った…あの子がラブミー部に入ったなんて事はありませんよね!?」
「彼女の服装がラブミー部の制服に見えたのなら、そういう事だろうな」
「じ、冗談じゃありません!よりによってなぜ彼女なんですか!?これ以上、京子ちゃんに何かしようものなら俺は…っ」
「最上さん?」

思いも寄らず飛び出した愛しい少女の名に反応して、蓮が横から口を挟んだ。

「最上さんに…何か?」

自然、鋭くなる問いかけに、青年の視線が社長から蓮へと移る。彼は僅かに動揺すると、続く言葉を飲み込み唇を噛んだ。

「石橋……何か俺に話があるようだな」
「…はい。できれば早急にお話したいのですが、お時間をいただけますか?」

真っ直ぐに見つめる光の視線を受け止めると、ローリィは傍らにいる蓮に話しかけた。

「蓮、この時間はお前との先約があるが、先にこの石橋と話をしてもいいか。この後のスケジュールはどうなっている?」
「今日は他に予定を入れていませんので、俺の事はご心配なく。どうやら急を要する話のようですし、彼の方を優先させてください」

その代わり、後で事情は説明してもらいますよ?

眼差しでそう訴える蓮に、ローリィは分かったとばかりに右手をかざした。

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