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HAZARD 2

石橋光。
LME所属の3人組マルチタレントユニット、『ブリッジ・ロック』のリーダー。

「歳は俺と同じ……か」
そうは見えなかったけどなと呟くと、蓮は検索結果を表示していた画面を終了して、携帯を閉じた。

同じ事務所であっても部署が違えばほとんど出会うことはなく、例え偶然会っていたとしても、一緒に仕事をするような機会がなければ記憶には残らない。

演技の世界に没頭している蓮にとって、仕事に関する事以外の大抵の物は興味を覚える対象の範疇外であった。今回も例に漏れず、LMEの中でもトップクラスの人気を誇るタレントユニットの名を、調べて初めて認識したという次第である。

「……彼は最上さんの事をよく知っているようだったな」

ひどく驚愕していた光の様子を思い出し顔をしかめると、机に置いていた缶コーヒーをぐっと飲み干した。

(これ以上何かしようものなら……彼はそう言っていた。あの天宮という子と最上さんとの間で、何かトラブルでもあったのだろうか。それにしても……)

石橋でなくとも確かに腑に落ちないなと、蓮は眉根を寄せる。

(LMEではなく他の芸能事務所に所属している彼女が、なぜラブミー部のツナギを着ていたんだ)

蓮は天宮千織について石橋よりも先に携帯で検索をかけ、最低限の情報は入手していた。

(移籍…?わざわざラブミー部にか?)

LME内ならともかく、他事務所にまであのイレギュラーとも言える部が知れ渡っているとは考えにくく、そもそもそこへ入るメリットが見出せない。

現時点で蓮に分かっているのは天宮千織が『BOX“R”』でキョーコと共演をしているという事のみだ。

(問題があったとするなら、『BOX“R”』の収録が始まってからだな。ここ数週間と言ったところか)

キョーコに起こった異変について、蓮はこの期間に一つだけ心当たりがあった。

「どうしたの?」
ダークムーンの収録で、右手に包帯を巻いているキョーコに気づいた蓮が訊ねると、キョーコは顔を青褪めさせて具体的な理由を述べることなく平謝りに謝った。

「私の不注意でまた怪我をしてしまいました!役者としての自覚が足りなくて本当に申し訳ありませんっ」
土下座せんばかりに詫びるキョーコに、謝らせるつもりなどなかった蓮としては「大きな怪我にならなくて良かったけど、今後は注意するようにね」と極力優しく返す事しかできなかった。

彼女は演技こそそつなくこなしていたものの、休憩に入れば右手を庇い何をするにしても左手を使っていた事を考えれば、痛みも相当あったのだろう……と蓮は振り返る。

自分に対して畏まり、必要以上に恐縮してしまうキョーコに、蓮は寂しさと若干の苛立ちを感じずにはいられなかった。

それに引き換え、キョーコに訪れた災難を知った上で、彼女を守る為に社長に直談判に出た石橋光。彼は何を知っているのか、彼女とは一体どのような関係なのか。

(あの子は俺には話せなくても、彼には話せるというのか…!?)

光の言動は蓮の心をひどく掻き乱し、ただ待つだけの時間は惑う蓮を嘲笑い、その理性を蝕んでいくようだった。

「くそっ……!」

常の彼らしくない言葉を一つ吐き捨てると、蓮は持っていたコーヒーの缶を強く握り締めた。高い音を立ててショート缶にへこみが生じ、それが合図であるかのように、蓮の携帯が単調なメロディを奏でる。

真実への扉は、今、開かれた。

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