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HAZARD 3

「おう、待たせたな」
「いえ……」

蓮が室内に入ると、部屋の主はゆったりと腰掛けたまま、鷹揚に「座れ」と正面のソファーを指し示した。

「例の映画の件だが、B・Jを演じる為に更にもう一つの役が必要だという話は聞いている」
「社長」
「お前のことだから、だいたいのアウトラインはできているんだろう? 既に監督には」
「社長、ちょっと待ってください!」
「……なんだ」

話を遮られて明らかに不満そうな声を上げる雇い主に、蓮は強い口調で抗議をした。

「俺が何の為に、石橋君に先を譲ったと思っているんですか?」
「蓮。まずは本題が先じゃないのか。仕事熱心なお前とも思えない発言だな」
「ですが……っ」
「慌てるなよ。物事には順序ってものがあるだろう。別に話を逸らして隠そうとしているわけじゃない。少しは落ち着くんだな」

隠し込む可能性があるからこそ、安心できないんですよ……!
心の中の声を偽ることなく、視線で訴える。

「俺は優先順位を考えて話をしているつもりだが……不満か?」
「……いえ……分かりました。ではB・Jを演じる謎の俳優Xについてですが……」

これ以上は食い下がっても無駄だと判断した蓮は、社長室を訪れた本来の用件を早急に済ませようと、彼の仕事内容について説明を始めた。


「では、この線で進めていくんだな」
「はい、そのつもりです」
「分かった。松島には俺から伝えておこう」
「お願いします」

話が一段落付くと、ローリィは葉巻を一本手に取り、慣れた手付きで火を点した。

「……で、もう一つのお前の用件についてだが……」

自然、身を乗り出した蓮に目をやることなく、LME社長は深々と煙を吐き出した。

「何が知りたいんだ?」
「何って、決まっているじゃないですか!石橋君があなたに話した事についてですよ」
「まあ、色々聞きはしたがな。だが全てを話す必要もねえし、お前の知りたい事ってのを具体的に絞って言ってくれよ」
「社長……っ…!」

一刻も早く知りたいと思っていた話を後回しにされ、ようやくと思ったところで焦らされて、蓮の拳が怒りに震える。だが目の前の人物は、感情に任せて詰め寄ったところで、口を割るような相手ではない。

「……先ほどの天宮という少女と最上さんとの間に何があったのか知りたいのですが」

キョーコと石橋との関係も気になったが、何よりも知りたいのはいつも心においている少女の身の安否についてだった。石橋のあの焦りようは尋常ではない……蓮の知りえない所で何かがあった事は確実だ。

常よりも数段低い声で尋ねる蓮を、ローリィは気に掛ける風もなくあっさりと口を開いた。

「ああ、それな。悪いがお前に言うわけにはいかないんだ」
「なっ……!どういう事ですかっ!」

バンッと大きな音を立てて、蓮はテーブルに両手を突いた。

「俺に怒るなよ。別にお前をいたぶっているわけではないし、石橋に口止めをされたわけでもない」
「じゃあ何ですか!」
「秘め事にしましょう、と言ったのは最上君らしいぞ? 二人だけの……ってな」

大仰な民族衣装に身を包んだ男は、悪魔の如くニヤリと笑った。

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