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HAZARD 9

「考えすぎではありませんか……?」

ざわりと胸の内を掻きむしるような不安感。それを意識しながらも蓮の口が発したのは、提示された懸念を否定するものだった。

「本当にそう思うのか?」
「大げさな発想だと、そう考える方が普通でしょう。最上さんはこの世界で、女優として身を立てていくと決心をしているんです。誰よりも人を惹きつけ、好感を持たれる。それが天性のものならば、芸能界に生きる者として願ってもない事ですから」

それに……と蓮は立て続けに話を運ぶ。

「執着をすると言っても、限度があります。そう簡単に最上さんに危害が加えられるような事態に陥るとは思えません。だいたい彼女の事が本当に好きなら、傷つけるようなマネはできないはずです」

まるで否定することに意義があるかのように言葉を重ねる蓮に、ローリィはゆったりと口を開いた。

「女性陣に関して言えば、今のところはうまく住み分けができているからな。妹、親友、目標……たまたま被る相手がいなかったから、トラブルが起こっていないだけだ。それだって、これからはどうなるか分からん。彼女を唯一と思っているのは、誰も同じだ」

キョーコを実の姉のように、心の底から慕っているマリア。
普段はクールでありながらも、親友には甘い事がその動向から伺える琴南奏江。
事務所の壁を飛び越えても、女優・京子と同じ部に入る事を希望した天宮千織。

(確かに想いの深さは、相当なものかもしれないが……)

とは言え、それが危険の兆候だとはどうにも考える事ができず、蓮は社長に沈黙をもってして答えた。

「だが、それが異性となると話が違ってくる。男ってヤツは単純だからな。兄弟や、親友、あるいは……目標とする先輩などという位置づけでは満足できないはずだ。そうだろう、蓮?」

彼の少女が蓮に対して感じているであろう単語を強調されて、広い肩がピクリと揺れる。

「それは……俺への当てつけですか?」
「そう思うなら、そう思え。いつまでも枷に囚われて、グズグズしているような奴に用はない」
「……俺にだって、それなりに事情というものがあるんです。それはあなたもよくご存知のはずではないですか」

拗ねたように反論する蓮に、彼を子供の頃から見知っている男が僅かに口角を上げる。『敦賀蓮』を演じている時には決して見せないその表情を、昔から変わらないと懐かしく感じているのか、あるいは件の少女によって変わったとほくそ笑んでいるのか。

しかしローリィは綻ばせた口元を引き締め、一瞬の後には柔らかな感情を綺麗に消し去った。

「どちらにしても、野郎連中が狙うポジションはたった一つだ。その座を狙って、争いが起きるのは目に見えている」

争い―――その一言に、蓮にとって不愉快極まりない男達が、候補として浮上する。蓮がいくら牽制を掛けようとも、キョーコに近づこうとする図太い馬の骨。しかし、あの二人のような、常識を持ち合わせない人間は特例だろうと、蓮は頭を振った。

「あの子は恋愛する事を拒否しているんですよ? どんなに気心の知れた相手が言い寄ろうと、その意味に気づきもしないでしょう。男の方が空回りするだけです」
「その気づかないってのが問題なんだよ」

ローリィは深々と溜息を付き、自社のトップ俳優へ目線を送った。

「蓮……お前は『芸能界一イイ男』だの『抱かれたい男№1』だのと巷で言われておきながら、女にしつこく纏わりつかれたり、異性関係のスキャンダルがないのはなぜだと思う」
「は?」

突然向けられた自身への問いに、蓮は虚を突かれて頓狂な声を上げた。

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