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Happy Birthday 1

「今年は絶対、私が一番に言うのっ。お姉様に、お誕生日おめでとうって!」

昨年のグレイトフルパーティで最上さんの誕生日祝いに出遅れたマリアちゃんはそれが余程悔しかったらしく、数ヶ月も前からそう宣言していた。

誕生日を迎えた最上さんに、最初に祝いの言葉を告げるのは俺でありたい。

そう思うのは山々だけれど、彼女を姉と慕う小さな少女を押し退けるような事ができる訳もなく、今年は二番手に甘んじる事にした。

本音を言えば残念ではあるけれど……でも、最上さんのバースデーを、誰もが笑顔で祝って欲しいから。

その為なら俺の願望を抑えるなど、大した事ではない。


(そろそろだな……)

斜め上方を仰ぎ見ると、広間の大時計の長針があと数分で日付が変わる事を伝えている。

「お姉様!」

時間が迫っている事に気が付いたのだろう。久しぶりに会った父親から離れて、マリアちゃんがパタパタと駆けてきた。花のように広がるスカートをはためかせ、最上さんを目指して一直線に。

広げた手が彼女に届くかという距離で、毛の長い絨毯に足を取られて、小さな身体が前へと倒れかかった。

「マリアちゃんっ」

慌てた最上さんが屈んで抱きとめると、マリアちゃんはふぅと安堵の息をついて、円を描くように両腕を彼女の首へと回す。

「ありがとう、お姉様! 大好きっ」
ぎゅうっと勢いよくしがみ付いた少女に、最上さんの顔が綻んだ。

「私も大好きよ、マリアちゃん」
えへへ……と鼻を突き合わせて、二人がほのぼのと笑い合う。

「お手をどうぞ、お譲さん」
片膝を付いた最上さんに立ち上がる為の補佐を買って出ると、彼女は俺を見上げて少し躊躇した後、おずおずと白い手を差し出した。

リンゴーーーンッ…………リンゴーーン……ッ……

柔らかな温もりが触れる直前に、新たな日の訪れを知らせる音色が場内に響き渡った。時計の音に気を取られて止まったままの細い手を握り、腕を引いて最上さんを立たせる。

「……あ、あの……敦賀さん……?」

一向に手を離そうとしない俺に、最上さんが戸惑いの声を上げた。彼女の水面のように澄んだ瞳に、俺の姿が映り込む。

――今、18歳になったばかりの彼女が見ているのは……俺、だ…………

「Happy Birthday……」
「え……」
「18歳のお誕生日おめでとう、最上さん」
「は、はい。ありがとうございます……」

頬をうっすらと温色に染め、はにかんで笑う彼女に釣られて、こちらも笑みが零れる。

和やかな雰囲気の中、下に降ろしていた手がツイと引かれた。目線を移すと、そこにいたのはぷっくりと頬を膨らませているマリアちゃん。

しまった……!と思ったところで、時すでに遅し。

ごめんね、と眼差しで謝ると、マリアちゃんは仕方ないと言わんばかりに甘く苦笑して最上さんに向き直った。

「お姉様、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう、マリアちゃん」
「お召しになっているそのドレス、お姉様に凄くよく似合ってますわ。とっても綺麗!」

去年とは異なり、最上さんは肩から腰にかけて幾つもの花をあしらった、淡いピンク色のドレスを纏っている。その華やかな装いは、確かに彼女の魅力を引き出していた。

マリアちゃんの一言に、最上さんがふふっと嬉しそうに笑う。

「だってこれはマリアちゃんのお見立てだもの。素敵な誕生日プレゼントをありがとう」

……やられた……!

結果的に祝いの言葉は先に告げる事ができたものの、プレゼントに関しては完全に後れを取ったらしい。マリアちゃんが俺を振り返り、にっこりと意味深な笑顔を向けた。

やはり社長の血筋だけあって、抜かりはないと言う事か。

思った以上に落胆している自分に可笑しくなる。これは独占欲なのか、あるいは単なる自己満足なのか。どちらにしても俺は、彼女に関して他人に譲るという事ができないらしい。

心の狭い自分を再認識しつつ、スーツの胸ポケットから最上さんの為に選んだ品を取り出した。


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