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Happy Birthday 3

「最上さん」

呼び掛けると、彼女はふんわりとした笑顔で俺を視界に入れた。

「敦賀さん……マリアちゃんはお部屋に戻ったんですか?」
「ああ。今、コウキさんが迎えに来て、連れて行ったよ」

訊ねられて、そう言えば二人共、最上さんに声を掛けていかなかったなと気づく。

「さっきマリアちゃんが、蓮様とお話ししたらもう寝ますって挨拶をしてくれたので……夜中の一時半なんて、普段ならとっくに夢の中ですよね」

慈しむような声と優しく細められた眼差しに、彼女がどれほどマリアちゃんを大切に思っているかが伝わってくる。

「京子ちゃん、いくらイイ男が来たからって放置はないんじゃない?」
「え……あのっ、決してそういう訳ではなかったんですが……すみませんっ」

慌てて頭を下げる最上さんに、水をさした男が吹き出した。

「冗談だよ。本当に京子ちゃんは、何でも真正面に受け止めるんだな」

クックと笑う男に、呆気にとられていた最上さんは、顔を真っ赤にして抗議をし始めた。

「もう! どうしていつも、そうやってからかうんですか!」
「別にからかっちゃいないんだけどさぁ」
「そんな、笑いながら言っても全然説得力が……きゃっ……」

グイと彼女の腕を引くと、バランスを崩した最上さんが小さな悲鳴を上げた。

「敦賀さん……?」
「マリアちゃんだけではなく、君もそろそろ帰らなくてはいけないだろう?18歳のお譲さん」
「は……はいっ!」

俺の不機嫌オーラを敏感に察したらしく、最上さんがビシッと姿勢を正し、声も高らかに返事をする。

「そんな繁華街を見回っている補導官みたいな事、言わなくてもいいんじゃない? 彼女、このパーティの主催者な訳だし」

白けたように呆れ声を出す男に、にっこりと笑いかけた。

「彼女はまだ未成年ですしね。先輩として注意を促す事は必要かと思いますので」
「先輩ねぇ……本当にそれだけ?」
「それはご想像にお任せしますよ。さあ、最上さん。行こうか」
「ちょっ……京子ちゃん!」

反射的に最上さんに手を伸ばそうとした腕を避けて、華奢な肩を支えた。不満を隠そうともしない男に、冷めた視線を投げ、簡潔に言葉を残す。

「彼女の事はどうぞご心配なく。あなたの想像は、おそらく間違ってはいませんから」

では失礼、と目を見張る男に背を向けた。



「つ、敦賀さん、どうしたんですか?」

俺に背中を押されて、常よりも早足となっている最上さんが疑問を口にする。

「どうしたって、何が?」
「あんなの敦賀さんらしくありません! 単なる後輩だと説明をして、誤解の元はきっちり訂正した方が……」
「最上さん」

ピタリと足を止め、彼女の言おうとした言葉を遮る。

「俺はそんな説明をする気はないよ。第一、誤解ではないし」
「敦賀さん……?」
「ついでに言えば、あの彼は君をからかった訳ではなく、俺を牽制したんだ」
「は……?」

きょとんと目を丸くする少女の肩を軽く叩き、クロークへと視線を送る。

「君の荷物はあそこに預けてあるの?」
「あ……はい。パーティの準備をしていた時に来ていた服など荷物が嵩張るので、クロークの奥の部屋に置かせていただいています」
「ではそれを受け取ってこようか。だるまやさんまで送るから」
「え……でも……」
「社長からは、いつ帰っても良いと言われているんだろう? 君も明日は仕事があるんだし、そろそろ身体を休めないとね」

だから遠慮しないでと微笑むと、最上さんは少し逡巡したものの、僅かに頬を染めてコクリと頷いた。

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