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表裏一体 1

2日遅れの蓮誕です~~っ。
遅刻もいいところですが、他サイト様の極上のディナーを食した後のコーヒー程度のノリでお読みいただければと思います。





「最上さん、2月10日の夜に何か予定は入っている?」
「いえ……特にありませんが」
「良かった、実はお願いがあるんだけど」

2月10日――敦賀さんの誕生日に、して欲しいと頼まれたのは、お部屋に伺っての夕食の支度だった。

「バースデープレゼントのリクエストという事で……いいかな?」
「そんな、ご飯を作る程度の事は今までに何回もやっていますし、実際に今日もそれでお邪魔している訳ですから、プレゼントというほどのものでは……」

ない、と言い掛けてハタと気がついた。

去年、私が贈った誕生日のプレゼント。あれが敦賀さんの趣味に合わなくて、迷惑になっていたのだとしたら。

いつもさり気なく高級品を身につけている敦賀さんには不似合いだと渡す瞬間から感じてはいたけれど……できれば返して欲しいとすら思ったりもしたけれど。

――やっぱり、もて余していたんだわ……!

気の利かない自分があまりに恥ずかしくて、頬が焼け付くように熱く火照った。

「申し訳ありませんでしたぁぁぁっ!!」
「え、ちょっと、最上さん!?」

がばぁっと頭を下げてお詫びをすると、つむじの辺りから敦賀さんの慌てた声が降ってきた。

「どうして、いきなり謝るの? 君に図々しくもお願いをしているのは俺の方なのに」
「だって、去年差し上げた私のプレゼントがお好みに合わなかったから、また妙な物を贈られる前に先んじて無難なものを指定されたんですよね?」
「いや、それは違うからっ」

うるっと目に溜まった涙をそのままに見上げると、敦賀さんは戸惑いも顕わに一瞬固まり、私の視線を避けるように天井を仰いで大きな息を一つ吐いた。

「すみません……」

こんな事で敦賀さんを困らせてどうするのよ、キョーコ……!

再び謝罪を口にすると、長い人差し指がそっと唇に当てられた。驚きに目を見開いた私を気にするでもなく、それはすぐに離れると、頭の上へと移動して二度三度と髪を梳くように撫でられる。

「君から貰ったプレゼントはとても嬉しかったよ。これは本当……」

優しい手の動きと穏やかな言葉は、すりりと頬擦りしたくなる心地良さで、さざ波が生じた心を落ち着かせてくれた。

「だと、いいんですけど……」
「どうやら俺の言い方が悪かったようだね」

ごめんねと柔らかに言うと、敦賀さんはにこりと微笑んだ。

「では改めて……最上さん、俺の誕生日の夜に、君の時間と身体をいただけますか?」
「はい、私などで宜しければ、喜んでお引き受けいたします」

慣れというものは怖いもので、「むしろそちらのセリフの方が問題あるでしょう!」などと動じる事もなく、この人特有の持って回った言い回しをあっさりと受け入れて返事をする。

「ありがとう、嬉しいよ」

敦賀さんは少し腰を屈めると、私の方へと身体を斜めに傾けた。癖のない前髪が目の隅を掠め、耳たぶに温かな吐息が触れる。

「当日は君の熟練したテクニックで、俺の身体に至上の喜びを与えてくれるんだね。今から楽しみだよ……」

ひそりと内緒話のように囁くと、敦賀さんは凶悪なほど艶やかに微笑んだ。

「………りょっ、料理を作るだけなのに、なぜわざわざそんな言い方をするんですかぁぁっ!」

一度は難なく避けたというのに、直後に繰り出されたカウンターパンチをしっかりと鳩尾に入れられて、数秒の呼吸困難に陥った後、心の限りに絶叫する。

「だって君に食事を作ってもらえるのが俺にとってどれほど嬉しい事なのか、きちんと分かってもらえるように説明しないとと思ってね」
「それなら、もっと率直な言い方があるじゃないですかっ。敦賀さんは言葉の表現が紛らわしいんです!」
「紛らわしい? そうかな」

考えもしなかったよとでも言いたげなとぼけた調子に、少しばかりムッときて勢いのまま話を続行する。

「そうかなではなくて、そうなんですっ! 日本語はもっと的確に、誤解の生じないようにきちんと選定して話していただけませんか!?」
「俺はこれ以上はないほどに、言葉を選んでいるつもりなんだけどな」
「どこがですか!」
「どこがも何も……全てが?」
「はいはい、敦賀さんが天然タラシだという事はよーーく分かりましたっ!」

これ以上は付き合っていられない、そう思って座り込んでいた床から立ち上がろうとした時、敦賀さんの腕が伸びて、私の背後にあるソファーへと片手がつかれた。

「天然というのは、ちょっと違う気がするな」
「そうやって、自覚がないのが問題なんですっ」
「あいにく自覚は十分すぎるほどにあるんだよ、最上さん」

敦賀さんの顔に皮肉めいた笑みが浮かんだ。攻撃的とすら感じるその表情に、自分が何か過ちを犯したような感覚に襲われる。

「君が紛らわしいと言った言葉のニュアンスが……それこそが俺の本音だと言ったら、君はどうする?」


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