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久し振りの更新ですが、お知らせです。
「花のうてな」のみなみさんと、合同で本を書かせていただきました!
みなみさんが書かれた蓮視点を元に、キョーコ視点のエピソードを担当したのですが、とても楽しかったですよ~!
表紙は矢神オトヤさんが描いてくださって、とても可愛いんです。
詳細は「花のうてな」様にて、ご確認くださいね。

以下、私の担当分の冒頭部サンプルとなります。




Turn Exclamations


 8:18

 タイミングが悪いなぁ、と思う。
 それは連日晴天続きだった空が今日に限ってどんよりと厚い雲に覆われている事だったり、携帯を近くに置いておかなかったばかりに大好きな人からの電話にでられなかった事だったり、はたまたその用件が急な仕事で予定していたデートができなくなったという事だったりするのだが。
 留守録を聞き終えたキョーコは、早起きをして作り上げた渾身の出来の弁当を抱え、がっくりと項垂れた。昔から何かにつけて運の巡り合わせが悪いという事は自覚している。それにしても選りによって今日という日にまで、そのツキのなさを発揮しなくても良いではないか。
 身に過ぎた想いだと、諦めていた恋が成就したのは数ヶ月前の事。誰でもなく君が愛しいのだと、見詰める眼差しで、温度のある言葉で、優しく包み込んでくれる――そんな砂糖漬けのように甘い恋人はとても多忙で、まともに休暇を取る事さえ難しく、想いが通じ合ってから一緒に過ごした時間はそう多くはない。その彼が彼女と過ごす為に仕事を調整し、何とか丸一日の休みを獲得したのが今日だった。

 初めてのデート。
スケジュール帳にピンクのハートマークを描いたその日が近づくにつれて胸が高鳴り、何日も前から心を躍らせていた。お弁当のメニューを何にしようかとあれこれと考え、どんな服を着て行こうかとショップを覗いては、幸せな迷いの中で準備をした。
そうして迎えたデートの日の朝。時間に追われながらも全てを整えて、玄関でブーツを履いている時に思い出したのは、部屋に置いたままの携帯電話。慌てて二階に駆け上がり、着信ランプの瞬きに留守録があることを知って――現在に至る。

 「仕事が終わり次第、連絡を入れるから。本当にごめん」
 携帯を通して聞こえる想い人の声。申し訳ないと重ねる真摯な謝罪の姿勢は、機械越しでも充分に伝わってくる。敦賀さんは真面目な人だから、自分のせいではないのに責任を感じているんだろうな、とキョーコは僅かに口元を緩め、苦笑した。
仕方のない事なのだ。何しろ相手は日本を代表する人気俳優なのだから。彼がプライベートもままならないほど忙しいことなど、最初から分かっている。デートの一つや二つ、潰れたぐらいで落ち込んでいては、彼の恋人など務まらない。キョーコは沈みそうになる心を叱咤し、自分自身を戒める。またその一方で、せめて伝えたかったと思うのだ。私の事は気にしないでお仕事頑張ってください、と。
直にそう言ったところで、彼の感じている負い目が軽くなる訳ではないだろう。それでも話ができていれば、謝罪を録音するという、まるで罰ゲームのような事をさせずに済んだはずだ。すぐに反応が返ってこない苦しさ、辛さをキョーコは嫌と言うほど体験している。
今までに何度となく蓮に入れたお詫びの電話――その主なところは、悪縁極まる幼馴染関連であったりするのだが――はなぜか彼に直接繋がる事はなく、彼女の落ち度を留守番電話という記録に残さなければならない状況へと陥ってきた。『留守録でお詫び』は、言わばキョーコの専売特許のようなものである。しかし彼女とて、まさかそれを待望のデートの日に、逆に蓮から食らう事になるとは夢にも思わなかった訳だが。

 箪笥の上に置いてある達磨時計へと目を向ける。留守録の話では、現場への往復だけでも結構な時間がかかるという事だった。おそらく今は移動中だろう。体質的な問題から車の運転が困難なマネージャーを助手席に乗せて、彼はハンドルを握っているに違いない。すぐに蓮自身が電話に出る事はできないかもしれないが、それでも携帯にキョーコからの着信があれば隣にいる社を出させるなり、路肩に車を止めて受けるなり、何らかの対応をしてくれるはずだ。
とにかく返事をしなければと、フリップを開く。その途端、ブルリと震えて音を発したそれに、キョーコは反射的にボタンを押した。

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