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本誌の続き妄想です。割と脱線抜きで真面目に想像。
コミックス派の方はネタバレにご注意ください。


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「とうさん、ひどいよ!」
ロビーに集まる人々の注目を一身に浴びていることに全く頓着せずに、彼女はあの人へと近づいた。

「おれのこと、ぜんぜんきづいてくれないんだからっ」
頬を膨らませて怒る最上さん――いや、あれはクオンか――に彼は人の輪を外れて歩み寄ると、笑いながら大きな手を頭の上にポンと置いた。

「ああ、悪かったな、クオン。皆に別れの挨拶をしていたから、お前に気づくのが遅くなってしまった」
「どーせ、せがちいさいからわからなかったっていいたいんでしょ。おれだっておとなになったら、とうさんとおなじくらいか、それよりももっとおおきくなるんだから!」
「それはどうだかな。父さんを簡単に追いこせるとは思うなよ」
父を慕い甘えて拗ねる息子に、彼は不敵な笑みで言葉を返す。

先日再会した時に、俺はいつの間にか彼よりも背が高くなっている自分に気が付いた。
敦賀蓮として生きることに必死で、父を、母を省みることもしなかったこの5年間。
月日は確実に流れていたのだと思い知らされた。

俺にとってあの人の存在は子供の頃から絶対的なもので、あまりに力強く強大だった。
そして大人になった今でも、俳優としての俺は未だにあの人の足元にも及ばない。
世界を舞台に演じている彼には…………!

「こっちだよ!」
クオンがあの人の腕を引っ張って、こちらへと歩いてくる。
「レンがとうさんをみおくりにきてくれたんだ!」

そんなに引っ張るな、転ぶだろう?と彼はクオンを嗜め、顔を上げて俺へと視線を移した。

「やあ、敦賀君。わざわざ見送りに来てもらえるとは嬉しいよ」
声をかけたのは、日本が誇るハリウッドのアクションスター「クー・ヒズリ」。

「急な帰国と聞きましたので、ドラマ・ダークムーンの代表としてお見送りに来ました。もう少し日本に滞在されると思っていましたので残念です」
答えたのは、彼がかつて出演したドラマで同じ役を演じる日本の俳優「敦賀蓮」。

――今の俺はまだ未熟ではあるけれど、必ずあなたを越えるほどの俳優になって、あなた方の元へ帰ります――

声には出せない想い……それを汲み取ったかのように彼は穏やかな笑みを湛えて、俺に右手を差し出した。

「新旧の嘉月が揃ったか」
「いい絵だな。マスコミがいたら大喜びでシャッターを切っているところだ」
彼と握手を交わすと、あちこちでささやき声が交わされた。

「ほら、レンだっていってるじゃないか。もっとにっぽんにいればよかったのに」
クオンの言葉を借りて、最上さんが本音を漏らす。
「仕方ないだろう、クオン。帰らなければいけない用事ができてしまったんだから」
彼がくしゃりと頭を撫でると、クオンは首を竦めて嬉しそうに頬を染めた。

「おい、クー。さっきからお前を『父さん』と呼んでいるこの子は誰なんだ?」
ロビーに駆けつけたあの人の旧友の一人が、最上さんを指し示して彼に尋ねた。

「私の可愛い子供だよ。お前達と同様に、急に帰ることになった私を見送りに来てくれたんだ」
人好きのする笑顔で、彼は嬉しそうに答える。

「お前の息子って確か20歳くらいになるんじゃなかったのか?出産祝を贈ったのはそのぐらい前だと思ったが……」
そう言って、彼の友人はふと俺を見た。
「そう、そこにいる敦賀君と同じぐらいの歳だったはずだ」

「えっ?」と驚いたような顔で、最上さんが俺を仰ぎ見る。
余計なことを……と正直、思わずにはいられなかった。

「だがこの子は10歳のクオンなんだよ」
あの人は事もなげに言うと彼女の肩に両手を置き、クルリと集まった人々の方へと身体を向けさせた。

「日本に滞在している間、私の身の回りの世話をすると共に息子を演じた女優の卵だ。……さあ課題は終わりにしよう。この数日間世話になったな、ありがとう」

彼はパチンと指を鳴らす。
それを合図に俯き目を閉じたクオンは、半円を描いて顔を上げ、目を開けたときには京子へと戻っていた。

「私の方こそクオンを……先生の息子さんを演じさせていただいて、とても……勉強になりました」
彼を振り返り、最上さんは綺麗な角度で頭を下げる。

「先生、本当にありがとうございます……っ」
別れを意識し感極まって泣きそうな彼女に、あの人は首を横に振った。

「呼び方が違うだろう?私はお前の父ではなかったのか、キョーコ?」
「お……とう、さん……」

ポロポロと涙を零す彼女を彼は慈愛のこもった眼差しで見つめ、その背中をあやす様に優しく叩いた。
それはまるで泣いた我が子を慰めるかのようで、俺は……そして周りの人々は、そんな二人を言葉もなく見守った。



「あの……さ、最上さん」
「なんですか?」
クーの見送りを終えて事務所へと向かう車の中で、俺は彼女に気になっていた疑問を投げかけた。

「クーに『お父さん』って言ったのは、あれはどういう意味……?」
「あれは……先生が、『私はお前の父さんだろう?』って、そう言ってくれたからなんです」

……え………?

「クオンの課題が終了した後、私……なんだか寂しくて……先生みたいなお父さんが欲しかったって言ったら、『私は親子の縁を切った覚えはない。お前は父さんの子なんだろう』って」
「………………」
「先生の言葉が凄く嬉しくて……だから……先生は私のお父さんなんです」
「………………」
「敦賀さん?どうしました?」

黙り込んだ俺をいぶかしみ、最上さんが助手席から身を乗り出して、俺の顔を覗き込む。

「いや……何でもないよ?」

俺は右手で口元を覆う仕草をして、咄嗟に顔を隠した。
おそらくは染まっているであろう頬を、彼女の視線から守るために。

一体あの人は……
どこまで分かっていて、彼女にそれを言ったんだ……?
俺の気持ちに気が付いているわけじゃないよな?
……いや、最上さんを餌にして俺を釣り上げた時点で、既にバレバレだったのか……!?

この場に本人がいれば問い質したい気持ちでいっぱいだが、既に彼は機上の人だ。

「敦賀さん、本当にどうしたんですか?」
上目遣いで聞いてくる彼女に、俺は乾いた笑いで質問をかわす。

「最上さんは……本当にクーがお父さんでいいの?」
「はい!当然です!!これ以上はない、最高のお父さんです!」

力強く答える彼女を見て、これから先、父との兼ね合いは心配ないなと……
そう思ってその意味するところに気が付き、俺はまた頬を染める羽目になった。


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簡単に本誌感想を。

テンちゃんはこの扱いで一回限りで出番終了ってことはないんでしょうね、きっと。
今回は正直、感想どうこうよりも148cmの彼女に蓮が目線を合わせるには、あそこまで屈まなければいけないのかと、そのことの方がちょっと衝撃だったり。
まるっきりお子ちゃまだよ……と148.5cmの私としては少々複雑です。

生クオンはまあ想像通りというか、インパクトはあまりなかったですね。

ロビーでキョーコちゃんに突っ込まれると分かっていても、彼女の傍にちゃっかり立っている蓮が可愛かったです。


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