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「ご招待 2」です。

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<ご招待 2>


「キョーコちゃんに用があるってことだったからさ、多分『坊』を倉庫に置きに行っているんだろうと思ってここまでマネージャーさんを案内したんだよ」
「すみません、光さんにまでお世話をかけてしまって……本当にあの傍若無人の坊ちゃんは……っ」

TBM局内での移動中に「黒い悪魔に会いにいく!」と言って駆け出した飛鷹を、彼のマネージャーは探し回っていたらしい。
キョーコが鶏の着ぐるみを着て出演しているトーク番組の収録現場かもしれないと当たりをつけてはみたものの既に撮影は終わっており、右往左往している所を光が気付き声をかけたのだ。

「時間がないので申し訳ないのですが」と挨拶もそこそこに松田は飛鷹を連れて行き、後には親切心で案内をかってでた光が残された。

「いいんだよ。それにしてもキョーコちゃんって子供に好かれるタイプなんだね」
「えっ!?別にそんな事はありませんけど」
「だってあの飛鷹君がわざわざ君を訪ねてくるぐらい懐いているし、今度のパーティだってもう一人の主催者は社長の孫娘だろう?二人ともサラブレッドで周りに大人がいる環境で育ったせいか癖があるって有名なのに面倒見がいいよね」

人の良い笑顔でニコニコと話す光に対し、キョーコは何かを考えるように軽く握った手を口元に当てた。

「飛鷹君が私に懐いているかどうかはともかくとして……マリアちゃんに関しては私、彼女を子供と思って付き合ってはいませんから」
「……?」
「大事な友人なんです。他の人がどう見ているかは知りませんが、マリアちゃんって芯のしっかりした優しい子なんですよ?パーティも彼女が笑ってくれるならと、そう思って企画したんです」
「ふうん……他の人は大抵あの子の事を『恵まれた環境にあるのをいいことに好き放題やっている我がままお嬢様』と思っているんじゃないかな。何が不満で養成所や事務所に来て、悪戯や新人イビリをしているんだろうってね」

(光さんがこんな皮肉めいた言い方をするなんて……)
彼らしくない物言いに驚くも、誤解を解きたくてキョーコは彼に反論をする。

「そんな……それは上辺ばかりを見て本当のマリアちゃんのことを知らないから……あの子の事情を分かっていないからっ」
「うん、キョーコちゃんはマリアちゃんを理解していて、大事に思っている。そんな友人がいてあの子は幸せだよね」
穏やかに光が微笑む……彼らしい表情で。

「だから俺もそんな君に………キョーコちゃん?」
ぼうっとして心ここにあらずといった様子のキョーコに、光が彼女の名を呼ぶ。

「え……」
「どうかした?」
「いえ、何も……」
「そう?ならいいけど……キョーコちゃんとマリアちゃんが企画してくれた今度のパーティ、楽しみにしているね」
「はい、お待ちしてます」

(どうしたんだろう、なんだか急に考え込んじゃって……)
キョーコの様子が気になり、スタジオへと戻るはずの光の足が止まり後ろを振り返る。

(やっぱりおかしいよな)

メンバーの二人が待っているのは分かっていても、キョーコを置いていくのも忍びなく踵をかえそうとした時、危うく前から来ていた男性とぶつかりそうになった。

「あ、すみませんっ、俺よそ見しててっ!」
「いえ、大丈夫ですから」

聞いたことのある声に相手を目で確認すると、そこにいたのは同じ事務所の先輩に当たる俳優だった。
年は同じだがキャリアは彼の方が長く、実力派として評価が高い。

「敦賀さんっ!おは……」
「失礼」

彼は軽く会釈をすると挨拶をしかけた光の横を通り過ぎて、立ち尽くしている少女の元へと足早に向かう。
マネージャーの社が光に一礼をして、その後を追った。

(ああ……そういえば敦賀さんとキョーコちゃんはダークムーンで共演しているんだっけ)

話し始めた三人を見て、光は引き返す必要性がなくなったことを知り、メンバーの待つ場所へと向かった。


「恵まれた環境にある順風満帆な生活……自分勝手な行動……私、その一面しか見えていない……?」

光が立ち去り、一人になったキョーコは小さく呟いた。
彼が言った言葉と同じようなことを、最近自分が思ったことに気が付き愕然とする。

(上辺だけを見て、彼女の環境の背景を、気持ちを理解しようとしていなかった……?ナツ姫……!)

「最上さん」
「………………え………」

深く考え込んでいたキョーコはかけられた声に反応するのが遅れ、いつの間にか目の前にいた相手をきょとんと見つめる。

「え……あ、敦賀さん……!?」
「何をそんなに考え込んでいたの?もしかしてさっきの彼のこと……?」
「さっきの彼って……光さんのことですか?」
「光さん?」
蓮の眉根がぴくりと動く。

「彼のこと、名前で呼んでいるんだ。俺の名前はあの時以来、呼んでくれないのに?」
「あの時って、あれは久遠少年を演じていたからじゃないですかっ。それに光さんの場合はしょうがないんです」
「どうして?」
「蓮……彼はブリッジロックというグループに所属していて、その3人は皆苗字が石橋なんだよ。……そういうことだよね、キョーコちゃん」
「はい」
社が事態の悪化を恐れて、キョーコの代わりに簡潔に説明をした。

「そう……最上さん、その石橋光君とはずいぶん親しそうだったね」
(蓮、そんなストレートな探りを入れてっ)
社が心の中で叫ぶ。

「親しいというか、とてもお世話になってます。優しくて凄くいい人なんですよ。24日のパーティにお誘いしたんですけど、顔を出せるってことで嬉しくて……!」
(キョーコちゃんもバカ正直に真っ直ぐ打ち返さなくてもいいのに!しかも大ファールだよ、それっ)
「良かったね……ちなみに聞くけど、彼以外に最上さんが招待した男の人ってどのくらいいるの?10代、20代位の人で」
(蓮っ!お前、本ッ当になりふり構ってないな?その見え見えの聞き方!)
「そうですね……何人かいらっしゃいますが、今日は4人ほどお誘いしてOKを頂きましたよ。でもどうしてそんなこと…あっ…?」
(ほら、キョーコちゃんだって流石に……)
「そうですよね。敦賀さんも同年代の人がいた方がお話も弾んで楽しいでしょうし!その点は大丈夫です、安心してください」
(……気付かないんだな、ここまで言っても。安心どころか不安材料がてんこ盛りだよ、キョーコちゃん……)

社がちらりと蓮の顔を覗き見ると、彼は外しまくりのキャッチボールを気にしていないかのように、満面の笑顔を浮かべていた。

「それは会うのが楽しみだな。その時には最上さんが俺の事を紹介してくれる?」
「はい!喜んで!」
(まさか一人一人品定めをしつつ牽制していく気じゃないだろうな?そんな素直に喜んでいる場合じゃないぞ、キョーコちゃんっ!)

まあ、この男に勝てる相手はそうそういないだろうけど……と苦笑する社と、彼の様子に気付きながらも済ました顔をしている蓮。
幸か不幸か、二人のそんな心中を全く解していないキョーコは改めて彼らをを誘う。

「敦賀さんや社さんに来て良かったと思っていただけるようなパーティにしますので、お二人とも是非いらしてくださいね。マリアちゃんと一緒にお待ちしてます!」


―――どうか楽しいひと時を……―――


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