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F~Hまでです。

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F…Father

「最上キョーコさん」
マリアに連れられて、彼女の父親コウキがキョーコの前に立つ。

「今日は素敵なパーティをありがとう……いや、あなたにはもっと前からお礼を言うべきことがあった」

コウキはマリアに視線を送り微笑み合うと、キョーコを真っ直ぐに見つめる。

「マリアと私の架け橋になってくれてありがとう。私がこの子の父親として会えるチャンスを作ってくれてありがとう。心から感謝しています」
「いえ、そんな……」
深々と礼をするコウキにキョーコが恐縮する。

動揺していたとはいえ小さな子供に冷たい仕打ちをした父親に対してキョーコとしても思うところはあったのだが、真摯に語りかけるコウキにそれを告げる気は起こらなかった。

大きな悲しみを持て余してそれを抑えることができずに子供に当たる……キョーコはそんな人物が彼女自身の身近にもいたことを思い出す。

マリアとコウキのしっかりと繋がれた手が、ふと目に留まった。

(あの人も自分の中の悲しみを整理できたなら、私の手を取ってくれたのかしら……?)
そう思った次の瞬間、キョーコはぎゅっと目をつぶり浮かんだ考えを振り切った。

(そんな仮定なんてしてみたところで意味はないわ)

キョーコは腰をかがめると、マリアの嬉しそうな顔を見て微笑んだ。

「マリアちゃん……大事なパパの手、離さないようにしてね」


G…God

「へえ……あの人がキョーコちゃんが一番頼りにしている先輩なのかい?確か敦賀蓮さん……だね」

だるま屋の女将がダークムーンの共演者と話している蓮を見ながら、キョーコに聞く。

「はい!一番尊敬していて、同じ俳優を目指す身としてはもう神様みたいな人です!!」

力説するキョーコを見て、女将がプッと噴出した。

「ずいぶん株が上がったものだね、あの人は。前はなんだっけ?『ぎゃふん』だったか『打倒』だったか、色々とセリフがついていたじゃないか。いつの間にかなくなっていたけどね」

部屋にある蓮のポスターを指していることに気づき、キョーコは慌てて口止めを図る。

「お、お願いしますからそれはもう忘れてください!敦賀さんに知られたら大目玉を食らいます!」
「そんなに怖い先輩さんなのかい?」
「はいっ、それはもう大魔王並みに……」

ブルブルと震えるキョーコに、大将がちらりと視線を送った。

「神に大魔王か。ずいぶん大層な存在だな、お前にとって」
大将がどこか不機嫌そうに呟く。

「だがあの男にしてみれば、そんな上の位置でお前から崇め奉られたいわけではなさそうだがな」
「は……?それはどういう……?」
「気づいてないなら、お前はまだ知らんでいい」

それだけ言うと、大将はテーブルに置かれたカクテルを一気に飲み干した。


H…Hizuri

キョーコとマリアが楽しそうに話している様子を、少し離れたところで宝田親子が見守っていた。

「マリアからのメールには彼女の事が多く書かれていて、どんな子かと興味があったのですが……」
「それで、どうだった?」
「真っ直ぐな子ですね。何事にも一生懸命な……マリアが『お姉さま』と呼んで懐いているのも分かる気がします。あんな子ならもう一人娘がいてもいいですね」
「それは無理な話だな」
「なぜですか?」

さっくりと言い捨てる父親にコウキが問う。

「あの子の父親候補は既にいるんだよ。クーの奴がそうだ」
「クーって……あのクー・ヒズリですか?」
「ああ……なあ、蓮」

近くで彼らと同様にキョーコを見つめていた蓮を、ローリィが呼びつける。

「お前はクーの息子を演じていた最上君を見ているだろう?」
「ええ、まるで本当の親子のようでしたね」
「クーの奴、よっぽど最上君が気に入ったのか、『課題の演技は終わっても親子の縁は切れていない』などと言って、最上君の父親になると宣言したからな」
「え……っ?」

寝耳に水の話に蓮が驚きの声を上げた。

「なんだ、知らなかったのか?」
「はい……彼の息子の演技を延長しているだけだと思っていました」
「意外に最上君と突っ込んだ話をしないんだなあ、お前」

容赦なくざっくりと切り込むローリィに、蓮は返事のしようがない。

「まあ、自分のことをペラペラと話す娘でもないが。しかしなあ……」

にんまりと社長が笑う、その表情に嫌なものを感じて一歩下がる蓮に、彼は無駄な抵抗とばかりに近づくと、若干声を落として囁いた。

「先に親子の名乗りを上げられるとは……出遅れた感があるよなぁ、蓮?」
楽しげな社長の様子に、遊ばれていることを十分過ぎるほど自覚している蓮は、恨めしげに彼に視線を送る。

「親子の名乗りって……もしかして敦賀君も彼女の父親候補なのですか?」

二人のやり取りを見て素で聞くコウキの言葉に、蓮は更にがっくりと肩を落とした。


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