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I、Jです。

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I…Image

彼としては少々意外だった。

童話に出てくるプリンセスのように裾がふわりと広がるドレスを着て、大喜びでクルクルと回る……そんな姿すら思い浮かべていたというのに。

彼を出迎えた彼女は盛装どころか、裏方とも言えるコックコートを身に着けていた。

「似合いませんか?このコックコート……」
物言いたげな蓮の様子に、キョーコが小首を傾げて聞く。
「いや……もちろん凄く似合っているけど、俺としては君のドレス姿も見たかったかな」

『今は大切な人は作れない』
そう思いながらもあまりにも恋愛ごとに鈍すぎる彼女の反応を引き出したくて、蓮はわざと意味ありげな言葉を選んだ。

「そう言っていただけるのは嬉しいんですが、私はこれでいいんです。今日の主役はマリアちゃんなんですから」

彼の意図には気づかずにキョーコはあっさりと言葉を返す。
その予想通りの無反応さに蓮は内心がっかりしつつも、彼女の言葉に幾ばくかの引っかかりを覚えた。

「最上さん、君だって主役だろう……?このパーティのもう一人の招待主なのだから」
「いいえ、この企画の本来の目的はマリアちゃんに楽しんでもらうことだったんです。私が招待主になったのは成り行きにすぎませんから」
「でも……」
「それにですね」
キョーコは両手を背中の後ろで組み、数歩前へ出てからクルリと蓮を振り返った。

「今日の私はプリンセスではないんです。だからドレスは必要ないんですよ」
彼女は軽やかに言うと、それ以上の話は不要とばかりに会釈をして親友の元へと歩いていった。

変わらない、と蓮は思う。
いつも人の為に一所懸命で、自分のことなど二の次で。
温かで優しい……でも芯の強い女の子。

かつて日本の女の子のイメージとして捉えていたその性質は、いつの間にか彼の理想となっていた。
そしてその理想に当てはまるのは、ただ一人の女性であることも今の彼は気づいている。

それは無垢な心を持った、遠い昔から変わらない――彼の大事なプリンセス。


J…Juice

「ドレスアップしても飲む物がジュースでは何だか興醒めよね」
身体の線が良く分かる黒いドレスを纏った美人がふぅと溜息を吐く。

「仕方ないわ、モー子さん。未成年でお酒を飲むわけにはいかないもの」
「ふーーーーーーん?」
異議あり!と言わんばかりの彼女の反応に、キョーコが一瞬たじろぐ。

「な、何?モー子さん?」
「じゃあ、お酒は飲めなくてもオリジナルのカクテルを作るなんてことはできるのかしら?」
「え……えーと、それはほら、バイト先も居酒屋さんだし、私が作ったわけではないから……」
「自分で作ってなくても、二人のイメージに合うようなお酒を指定してブレンドしてもらったんでしょう?それにアンタ、時々昭和語録のような言葉がポンと出るじゃない。今回のパーティ名の初案にしたってそうだし、実は年齢を偽っていたりしない?敦賀さん並みに」
「ひっどぉぉい、モー子さん!敦賀さんはともかく、私は年齢を騙っていたりしないわよぉぉ!」
「ちなみに俺も実年齢なんだけどね?」

背後から聞こえてきた美声に、二人が凍りつく。

「そんなに俺って老けて見えるかなぁ?」

「はい、見えます!」……とも言えず、冷や汗を流すラブミーコンビに、大魔王はニコニコと笑顔を振りまいていた。


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