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「へえ、敦賀さんがそんな話をしたんだ」

混雑のピークが過ぎたLME内の食堂で、定番のランチを食べながら奏江は同じ部のツナギを身に着けている相方に聞いた。

「うん。何色にも染められる翼なんて、なんだかロマンティックよね~。今の私の羽は何色かしら。羽ばたき始めた小鳥ということなら、ほんのりとピンクの入った白かなぁ……」
キョーコはテーブルに両肘をつき、夢見るようにうっとりと語る。

「演じる役でその色が変わるという意味なら、あんたの今の羽の色はさしずめ真っ黒ね。未緒といじめ役の毒気に汚染されて、他の色に変えるのはきっと一苦労よ」
「ひっどぉぉぉい、モー子さんっ!それじゃあまりにも夢がないじゃないのっ」

涙目で絶叫するキョーコに動じることなく、奏江はサラダの彩りの一つである小さな赤い海老をフォークに刺して口へと放り込んだ。

「あんたねえ、何甘いこと言ってんのよ。この世界は夢ではなく現実で、あんたはわざわざ厳しい選択をしたんだからね。分かってるの?」
「それは分かってるけど……」

かつて『いじめ役など断るべきだ』と勧めてくれた親友の手前、キョーコとしてはどうしても言葉の語尾が弱くなる。
この選択によって辛い試練が与えられる事は想像に難くないが、師と崇めた人の教えに習って自分を磨いていきたいという決意は変わらなかった。

「でも!大変だからって逃げていたら、壁を超えることはできないわ。これが私に与えられたチャンスなら、それをバネに大きく羽ばたいてみせる!」

グッと拳骨を作り意気込むキョーコを、奏江はチラリと横目に見る。

「それならそれでいいんじゃないの?あんたのその有り余るパワーでもって天高く飛ぶ頃には、羽の色なんていつの間にかあんた好みのメルヘン色にでも変わってるわよ」
「……モー子さん?」

楽観的すぎると指摘されることを予想していたキョーコは、思いがけない奏江の発言に目を丸くして彼女をジッと見つめる。

「だからっ、あんたはそのまま迷わずに突き進んでいればいいってこと!」

投げやりに言い放ち、ついっと横を向いて頬を染めた奏江に、キョーコは頬の筋肉が段々に緩んでいくのを感じた。

「モー子さん、大好きーーっ!」
「ああもう!分かってるから、そんな事大声で叫ばないでちょうだいっ」

「……え……」
聞きなれているはずの奏江の諌めの言葉に、キョーコは若干の引っかかりを覚えた。

「分かってる、から……?」

『分かったから』ではなく『分かってるから』
その言葉の違いにキョーコが気づく。
受け入れられているという実感に、彼女はキラキラと目を輝かせた。

「やっぱりモー子さん、だぁい好きっっ!!!」
「あんたって子は人の話を全然聞いてないわねっ!?」

食堂中に響き渡る声で叫ぶ親友に、口が滑った事を若干後悔しつつも奏江は照れくさそうに小さく笑った。


「なんかさ、ラブラブだよな、あの二人」
「そうですね」
「ちょっと同席しづらい雰囲気だよな」
「そうですね」

食堂の入り口では遅めの昼食をとりに来た人気俳優が、少しばかりぶっきら棒な態度で彼のマネージャーの言葉に答えていた。


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「そうですね」とか言っておきながら、この後に蓮が「やあ、楽しそうだね、何の話?」などとさりげなーく二人の間に割り込む……に一票。


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