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私はようやく見つけたのに。
絶望の中から光を。
決して失くしたくない、大切なものを……!

「敦賀さんは簡単に言いますけどっ、憎まれてもいいだなんてそんな……ひどい、こと……っ、簡単に……」

ボロボロと涙が零れて頬を伝う。
手が、声が、どうしようもなく震えて止まらない。

「それがどんなに辛い事なの、か……分かりますか……っ!だ…大好きだった人が、憎しみの対象になる、なんて……それがどれほど苦しいことなのかっ……」

自分が今、怒っているのか、悔しいのか、哀しいのか、それさえも分からない……!

「愛が憎しみを生むのなら、私は要らない…!そんなもの、要らないんです……っ」

独り取り残されて、絶望と憎悪を抱えるくらいなら、私は……!


          *************


腕の中でしゃくりあげて泣く君を、力任せに抱き締める。
俺を失うのが怖いと訴える君が切なくて、酷いと俺を責める君がいじらしくて。

けれど、君は知らない。

君が過剰なほどに反応するあの男……当たり前のように君の名を呼び捨てる彼に、俺がどれほど嫉妬しているのかを。
憎んでいると言いながら君が彼に傾ける想いの強さとその固執の有り様に、絆の深さを見せ付けられているようでやるせない思いを抱いているということを。

君の心を占めているあの男の存在を消せるなら、それが愛でも憎しみでも構わない……
そう思うほど、俺は君に縛られている。

君が要らないという物を、俺は君を手に入れるために欲している。
愛も憎しみも、その他のあらゆる感情も、全て俺にだけ向けてくれればいい……!

どうしようもないほどの独占欲に身が焼かれるようだ。
そしてその嫉妬の炎は、息を吐く間もなく君をたちどころに焼き尽くしてしまうことだろう。
それだけは何としても避けなければならない。

……出すな。見せるな。気取らせるな。

俺の本音を、狂った思いを、悟られてはならない……!


          *************


「あれは、例えばの話だよ」
私の頭を温かな手が、何度も上下に往復しては優しく撫でていく。

「君が怖がっていたから……俺を傷つけてしまうのではないかってね」
落ち着いたバリトンの声が、耳元で囁きかける。

「例え俺を憎む日が来ても、君が俺を失う事はない。それだけを伝えたかったんだ」

身体の震えはまだ止まらない。
けれど敦賀さんの言葉は、私の乱れた心に徐々に染み込んできた。

「で、も……っ」
「人と人との繋がりは恋愛だけで結ばれているわけではないだろう?例えそれを失くしたとしても、俺と君との絆は消える事はない。君は君の目標を、自分自身を見失ったりはしない」
「……っ…」
「だから怖がらないで、俺を。俺の想いを。お願いだ、最上さん…」
胸が締め付けられるような声で敦賀さんは言うと、更にぎゅっと私を抱き締めた。

「敦賀…さ…ん……」
「受け入れようなんて無理をしなくていい。君の気持ちに答えが出た時に、聞かせてくれればいいんだ」
「だって、そんな都合の良いことっ」
「いいんだよ、それで」

良くなんてない……っ。
寄せた思いが返らない切なさは、私も十分すぎるほどに知っている……!


          *************


焦燥も顕な言葉を遮って肯定しても、君は納得できないと言わんばかりに首を振った。

「知ってしまったのにそのままなんて……そんなことできません」
「でも君はまだ答えられないだろう?」
抱いた身体がビクリと一度震えて強張った。

「俺はね、焦らないと決めたんだ。君との付き合いはこれからもずっと続いていくから……俺と同じ道を君は歩んでいくのだから」

胸元にあった彼女の顔が上を向いて、二つの瞳が俺を見つめる。

「それに俺もただ黙って待つ気はない。チャンスは逃さない方でね」
俺を映しているだろうその目を見据えて、思わせ振りに笑いかける。

「最上さん、君を抱き締める権限は俺にだけあるんだろう?」
どこか不安げだった眼差しが表情を変え、彼女の頬がぱぁっと赤らんだ。

「だ…抱き締める権限って、私そういうつもりだったわけでは……」
「俺はそういうつもりだったよ」
彼女は言葉を詰まらせたかと思うと、自分の状況を確認するかのように拘束している俺の腕に視線を落とした。

「ね、こんな風に俺なりに段々ステップアップをしていくつもりだから、君は心配しなくていいんだよ」
「……何だか……」
「ん?」
「何だかうまいこと言いくるめられているような気がしてきました」
「おや、今頃気づいたの?」

彼女は面食らったかのように呆然と固まったかと思うと、俺の腕の中で突如暴れ始めた。

「もーーっ、離してくださいーっ!」
「ダメ、離さない」
「私、敦賀さんの気持ちが少しでも和らぐならって思ったのにっ」
「和らいだよ……とても」

えっ、と君の動きが止まる。

「こうしていると、とても落ち着いて癒される。君は違うの?」
「そ……それは……」
数秒躊躇った後、言葉が続けられた。

「私も同じですけど……」
「じゃあ、いいじゃないか。お互いに気持ちが安らぐんだから」
「……やっぱりいいように誤魔化されている気がします」

少しふてたように君は呟いた。
それでも君が抵抗することなく、俺の腕の中に大人しく収まっていることが嬉しくて……
思わず出た忍び笑いを勘違いしたのか、また君が抗議を始める。

さあ、今度はどうやって君を言いくるめよう?


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